《しかし現実は厳しかった》
いよいよ市民センターを会場に、「コミュニティと在宅医療のお話会」を開催することになった。水戸市市民センターは、市内全域に32箇所ある地区公民館で、市民にとって身近な公共施設である。ここでは、様々な教室や集いが行われ老若男女、幅広い方々が利用されている。その一コマでの開催。
第1回目は、高齢化率30.37%(H24)と水戸市内で最も高齢者の多い新荘地区でスタートした。当日、意気揚々と会場入りしセッティングを開始した。やがて水戸在宅ネットワークのメンバーが数名、続いて水戸市高齢福祉課の方が来てくださった。期待を膨らませながら待つこと15分。が、誰も来られない。会場のドアは開けたままにしていたが、前を通過する人ばかり。結局、住民の参加はゼロ。関係者だけで会を行った。
内容的には、行政との連携だと、安心して広げやすいこと。複数の医療&専門機関による開催、地区で身近な専門機関での開催、地域の消防自警団等との連携での開催他、自分ごととして有機的に動くチームでの開催等が話された。行政に頼る、或いは政策を待つだけではなく、気づいた地域自ら取り組み、それを行政が支援するあり方を確認しつつ、まずはやってみること。医療福祉を取り巻く環境が大きくかわりつつある今、住民も関係者も主体的に進めていく必要があることを共有した。
しかし、
「意味がわからない」
「やっても無駄ですね」
と、厳しい意見も。初めての試み、思惑はものの見事に外れた。これが現実である。
必要ある事とは言え内容は伝えにくく、広報手段もない。また、町内会につながりもなく、できることは市民センター周辺の住宅にチラシを配り待つのみ。無謀と言えば無謀な開催であった。センター職員の方も心配され、
「次、どうします?」
と、声をかけてくださったが、応えることができず、出直しすることにした。
高齢化の地区、在宅医療が必要となる可能性が高いはず。しかし、現在は健康ですぐにどうこうではない。告知もままならぬ状態で、情報の質と方法が問われる。水戸市内には独居者も多く、都市化傾向も進み、つながりが薄くなっており、住民意識には将来への不安が必ずある。
「どうありたいのか」を考える機会と情報は求められるはずなのだが、民間有志の会ではすぐには理解されない。住民と専門職が寄り添い、一緒に話しができることは地域にとって必ず有益となる。イメージはぶれてはいない。しかし、もう一度開催して、再び参加者ゼロだとしたら先はない。
どのようにすれば、地域に伝えることができるだろうか、会への参加意識へつなげることができるのだろうか。糸口を求め、地域を歩き、住民、医療機関の中に飛び込み模索する日が続いた。ポイントはコミュニティ。地域の基盤である町内会、民生委員さんとのつながり方。市民センターへ足繁く通ううちに、毎月の地区回覧板があることを知った。オーソドックスな手法であるが意外に周知できるようで、とりわけ高齢者には馴染みのある情報ソースとのこと。そして、自治組織の許可、協力を得ることで利用させていただけることがわかった。まずは自治会への挨拶と、お話会のプレゼンテーションから。
コミュニティに寄り添うヒントが少し見えてきた。
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