いきかたのデザイン Vol1 《水戸のお話し会が始まった》


《水戸のお話し会が始まった》

 2年前(2014)の春、私は在宅医療をコミュニティへつなげるミッションをいただき、水戸へ来ることになった。土地勘もなく、どのように取り掛かればよいのかと考えつつ、まずは町を歩いてみることにした。

拠点は五軒町。ここからどこまで歩いていけるのか、毎日地図とにらめっこ。医療、福祉関連の施設を目印にまちの高齢者環境を自分の目で確認した。五軒町から大工町、松本町、緑町。翌日は水戸駅方面から浜田町、吉田町というように東西南北、毎日々歩いてみた。歩いていると「おや、なんだろう?」「どうなっているのだろう?」の繰り返し。拠点に帰ってからは資料を探し、地域の状況を確認しつつ暮らしのあり方を想像してみた。

 そんな折、松本町で「ぴんころ地蔵尊講」が毎月23日に開かれていることを知り向かってみた。人生を'ぴんぴんころり'と願う講だけあって、元気な高齢者がたくさん集まっていた。平均年齢は75-80歳位であろうか。聞けば、全て自主的な活動で、ボランティア運営。笑顔で声をかけ合い、お茶を飲み、軽い体操をしながらコミュニケーションがはかられていた。毎月参加することに生きがいと役割、願いを感じられている様子。参拝する人、講を運営する人の垣根はない。リーダーの大川祐司さんに気さくに声をかけていただきつながりができた。何度か自宅を訪ねさせていただき話を聞くうちに地域の高齢者の様子が少しずつわかってきた。

 一つは、がんばれるだけがんばって、住んでいる地区で暮らし続けたいこと。健康寿命の延伸である。ぴんころ地蔵尊講はまさに仲間と共に行う元気につながる具体的な活動で、互いを気遣っておられた。

 もう一つは、常に"不安"を感じながら暮らしていること。地域には一人暮らしの方も多く、「この先どうなるのだろうか」と、自分で決められない日々を送られている様子であった。とりわけ、医療・介護に関することは難しくわからないことばかり。結果、「いざとなった時、どのようにしたい」を考えることもなく、ともかく日々を元気に送ることに専念されていた。

確かに健康づくりは自分次第で行動に移せるが、医療・介護は人に相談しながら考えるしかない。しかし、身近に話せる専門職がいないのが現実である。

"住み慣れたこの地区で最期まで暮らしていたい"という願いをあきらめることなく実現するにはどのようにしたらいいのだろうか。大川さんと話しながら、「かしこまってではなく専門職と一緒に話ができる場があればどうであろうか」と投げかけてみた。「そりゃ、いいことだ。みんな不安ばかり。ありがたいね。」

ということから早速、近くにある老人福祉センターに会場をお願いし専門職の有志の方々に協力してもらい「在宅医療のお話し会」を開催することとなった。

といっても私自身、在宅医療について詳しい訳でなく、ましてや水戸の地域についてなおさらわからないので会では案内人となりつなぎ役をさせていただいた。

知識を届けるのではなく、一人ひとりの思いにつながる会、"不安→安心"へ少しでも変わればと、講演会でも研修会でもない"お話し会"というコミュニティが始まった。